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「抗菌」の落とし穴

 

ここ数年、抗菌加工を施した商品をよく見かけるようになりました。この「抗菌商品」は、日本人の清潔・安全志向に加え、MRSAによる院内感染や病原性大腸菌O-157による集団食中毒などをきっかけに急激に増加しました。

しかし、その抗菌効果はいかがなものでしょうか?国民生活センターが行った台所・洗面用品のテスト結果では抗菌効果は製品により差が大きく、ほとんど効果の無いものもあったそうです。抗菌効果は、抗菌剤と菌が直接触れた場合に発揮されます。つまり汚れの表面に付着した菌には効果がないのです。抗菌剤は洗剤とは違い汚れは落としません。抗菌商品だからといって日常の手入れを怠るとかえって不潔になります。使ったら汚れをよく洗い落とさなければならず、結局、無加工品と手入れは同じです。

抗菌剤は、無機系と有機系のものに分かれます。
無機系の効果は静菌(微生物の増殖を抑える)作用程度で、皮膚等への影響は少ないです。
有機系は、化学薬品を使った「有機合成系抗菌剤」と、天然の材料を抗菌剤として使った「有機天然系抗菌剤」があります。「有機合成系抗菌剤」は、抗菌効果が高く即効性もありますが、反面で皮膚等への影響が大きくなります。汗によって製品から皮膚に移りやすく、また気化して呼吸で肺からも取り込まれ、頭痛や不快感の原因になるものもあり、実際に気分が悪くなったり、皮膚炎が起きたなどのトラブルも報告されています。
最近出てきた「有機天然系抗菌剤」は安全性をうたったものが多く、ヒバから抽出したヒノキチオールやカニの甲羅などを原料としたキトサンが代表的です。
しかし、どんな抗菌剤を使ってどのように加工し、どんな試験を行ったか等は企業秘密とされていることが多く、繊維製品以外はきちんとした表示がされていないことがほとんどです。

抗菌剤により、皮膚を保護している皮膚常在菌が影響を受けたり、抗菌剤の使いすぎによって、耐性菌(その薬剤に対抗する力を持った菌)が出てくる可能性もあります。そもそも、空気中には常在菌と呼ばれる細菌やウイルスがたくさんいます。そして私たちの体にも、皮膚・口腔・胃・腸・膣と、常在菌はたくさん存在しています。つまりどんなに頑張っても菌と無縁になることは不可能なのです。「抗菌商品」をやたらに使うことで、本来私たちの体が持っているはずの“菌への抵抗力・免疫力”が低下し、逆に風邪をひきやすくなったり、ウイルスや細菌に感染しやすい体を作ってしまいます。化学薬品に頼った清潔志向は、弱い体を作るだけ、ということです。

ではどうすればいいのでしょうか。
最近では除菌ハンドソープはもちろん、抗菌剤入りボディソープまでも登場していますが、身体や手は普通の石けんで洗うだけで十分です。食器やフキンはきちんと洗って乾燥させれば菌は死にます。生ゴミを入れる三角コーナーなどは、こまめに生ゴミを捨て、タワシで洗い流せばきれいになります。まな板は熱湯をかけて乾燥させれば十分です。家の中の普通の汚れは固く絞った雑巾で拭き取るだけできれいになります。要は、昔ながらのシンプルな方法で十分なのです。

消費者の不安をあおるCMが後をたちませんが、一人ひとりが賢くなって、本当にその商品が必要なのか、「抗菌」である必要があるのか、きちんと見極めていくことが大切だと思います。

 
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